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覗き [信じますか?]

真夏の思い出


別に艶っぽい話ではない。


暑い盛りの休日だったのは確かだ。


エアコンの何となく効いた車内・・


運転席には同級生・・


その助手席にも同級生・・


運転席側の後部座席には私・・


A市に昔からあるM団地街の近くにある踏切・・


ここは昔から渋滞する場所だった。


線路を横断する道路・・


警報機が鳴り電車が通過するまで、結構な時間停車して待つ事になる。


エアコンを使用しているのに、締め切った車内で煙草の煙・・


ラジオからは鈴木雅之の歌が流れていたのを覚えている。


車の窓から、踏切で待つ数台の車を見ていた・・


真夏の炎天下の中・・ある事に気が付いた。


私は後部座席から、運転席の友人に声を掛けた。


「この暑いのに・・何かあったのかな・・」


すると友人が


「何かって・・・」


少しだけ、顔を後ろに向けながら返事を返してくれた。


「ほら、数台先で止まっている車に人が話しかけてるだろう・・」


私の目線の先には、踏切で止まっている数台の車があった。(6台位だったか)


その先頭車両の運転席を覗き込むように、腰を曲げ話しかけている人が見えた。


「え?・・・どれ。」


首を伸ばし、先の方を見ようとする運転席の友人・・


しばらく首を伸ばしたり、横にしたりしながら動いていたが・・


「誰もいないじゃん。」


そう言って私を見る。


助手席の友人も私を見ながら・・


「どこの事言ってんの・・・?」


私の顔を見ながら不思議そうにしている。


「え・・・ほらあそこ。」


確かにいる。


指をさす。


「はぁ・・?何言ってんの?誰もいないじゃん。」


そんな言葉を二人から投げかけられた。


「えっ・・・・・」


私はそれ以上言わなかった。


ただ、私の目に映っている人を見続けた・・


踏切が上がり、車が動き出す。


一時停止しながら、次々と車が踏切を渡り始める。


・・・・・最初は、トラブルか何かがあって、話しかけているのだと思った。


しかし、一台・・一台・・踏切を渡る車。


人が近くに立っているのに、クラクションを鳴らし、咎める車は一台も無かった・・


その姿勢のまま、その人は動かなかった・・


いや、動かないんじゃない・・


一時停止する車の中を、一台、一台、覗き込んでいる・・・そう見えた。


自分達の乗る車が、踏切に近づく・・・


前の車が、踏切手前で一時停止した・・


それは車が一時停止すると、じっと車内を・・見ていた。


大人・・・男・・?おんな?・・はっきりいって分からなかった・・


前の車の中を無表情で覗き込んでいる・・いやただ見ているだけのようだった・・


次は俺たちの車の番だ・・・


やはり、友達には見えていない・・


思わず視線を自分の膝に向け、俯いた・・・


視線を合わせては駄目だと、何故だか本当に思った。


心臓が壊れるんじゃないかと思うぐらい早く動いていた・・


車が一時停止をした。


顔を上げることが出来なかった・・


ラジオの曲だけが耳に入る・・


車が動き出す・・・


「・・・・・・・・」


踏切を抜けるまで顔を上げられなかった。


・・・・踏切を抜けたのが車の振動で分かった・・


私は、ゆっくりと顔を上げた。


もう、踏切じゃない・・ほっとした。


顔を上げた・・窓の外を見た・・流れる景色・・


アレも見えない・・


そして、後ろを振り向いた。


!ウワッ・・


こっちを見ていた・・心で叫んだ。


体が震えた・・


踏切から遠ざかる車・・


それの顔がこちらを見ているのがわかった。


あの目・・目か?いや、あの感じ・・


あれは絶対にこっちを見ていた。


・・・いやな視線だった。


あれからどれ位経つだろう・・


踏切は無くなり、電車は高架を走っている・・


あれは何だったのだろうか・・


今、思い返しても震えが来る程怖かった・・


そして、この曲を聴いても思い出す・・


あれは・・本当に何だったのだろう・・















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