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祖父 [信じますか?]





出張中の事だ。










今回の出張は現地のスタッフが同行する。















大きなショッピングセンターにある事業所での仕事を終えた時だった。













従業員の出入り口を出た所で、その施設の担当者に呼び止められた。











施設の担当者と立ち話をしていると、現地スタッフが気を使ったのか・・











「そこの従業員の喫煙スペースにいますね。」













そう言って少し離れた喫煙スペースでタバコを吸い始めた。














スクリーンショット 2023-07-17 095513.jpg

※写真はお借りしました。












施設の担当者と話をしている最中、現地スタッフがベンチに腰を掛けているのが目に入った。












少し込入った話をしていた・・・・










視界の端に現地スタッフと話をしている、お爺さんが目に入った。










灰皿を挟んで現地スタッフの真正面にいるお爺さん。











その姿は赤いツナギに黒い長靴、首にタオルを巻いていた。











農業に従事でもしているのだろうか









そう言えばこの施設にも生産者が分かる野菜を売っていたのを思い出す。









そう思ったのは一瞬だけだった・・・その後、施設の担当者と挨拶をして別れた。










ベンチに座る現地スタッフに向かって歩いていく。










先程一緒にいたお爺さんの姿は無かった。












「悪かったね・・・・」そう声を掛けた。











携帯をいじりながら、タバコを吸っていたスタッフが顔を上げた。











「さっき喋ってたお爺さん、ここの施設に野菜でも卸してる人だったの?」












スタッフがキョトンとした顔をしていた。












「さっき、話してたでしょ・・・・」











スタッフは真顔で・・・・












「え・・・自分一人ですけど。」













「え?・・・赤いツナギを着たお爺さんと話してたよね。」












「・・・・・・・・・・・・赤いツナギですか。」













現地スタッフは私に目を向けると、どんな人物だったかと尋ねて来た。















私は見た通りの事を口にした。















少し黙っていたスタッフの目から急に涙が零れた。











「おい、どうした・・なに泣いてんだよ。」













私は慌ててスタッフに聞いた・・・













「・・・・・それ、僕のお爺ちゃんです。」












「はぁ?お爺ちゃん。」













何をこのスタッフが言っているのか分からなかった。













「少し前に・・・・亡くなったんです。」















「拳客さんの言われた姿で、畑で倒れていたんです・・・・」












・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・












その後、そのスタッフが落ち着くのを待った。













そして、この件の口止めをお願いした・・・・














スタッフの話では、お爺ちゃんが大好きだったらしい・・













そして、出張の最終日に頭を下げられた。













「お爺ちゃんの事、教えてくれてありがとうございます。」













・・・・礼を言われる程の事はしてないんだけど・・・














でも、あのお爺さんが本当にスタッフの祖父であるなら・・・何となく心が温まるな。










では。
























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